【記者コラム】「TEAM BEYOND」

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 先日縁あって障害者スポーツの大会を観戦し、プレイヤーの方に取材をする機会を得た。

 取材をさせていただいたのは、東京の明治神宮外苑で学生自転車競技の全国大会とともに行われた、視覚障害者が参加するタンデム競技。国際自転車競技連合公認の国際大会として、日本はもちろん、マレーシアやニュージーランドからも選手が参加するなど、非常に注目度が高い大会だ。

 この大会では東京都のパラスポーツプロジェクトである「TEAM BEYOND」もPRをしていた。大会の運営係員や各大学の応援団が「TEAM BEYOND」のロゴが入ったステッカーを身に着けるなど、大会が一つになって障害者スポーツを盛り上げていこうという意識が前面に出ている印象を得た。

 競技中最も印象に残ったのは、タンデム競技の後に行われる学生のレースの応援のために、コース沿道に陣取る関東所在の各大学応援団から選手に贈られたエール。応援団はそれぞれの意匠を凝らして競うように雄叫びをあげて選手を後押しし、選手もそれに手を振って応えるなど、障害という壁の存在を全く感じさせない情景は深く私の胸に刻まれた。

競技後、出場選手の一人である柳川春己さんにお話を伺って感じたのは、2人乗り自転車の前部座席に乗り、自転車のコントロールを行う「パイロット」と呼ばれる、晴眼者の選手を全面的に信頼して競技に挑む姿勢と、障害を乗り越え様々な競技に打ち込むバイタリティだ。

柳川さんと、今回パイロットを務めた廣田さんは6年来の付き合いだが、2人でタンデム競技に出場するのは今回が初めて。しかし柳川さんは「廣田さんの慣れた様子のパイロットが非常によく、レース中も声掛けなどでコースのイメージができ、呼吸がピッタリ合っていた」と振り返る。取材には廣田さんも同席されていたが、絶妙なタイミングで合いの手を入れる廣田さんと、それに応じる柳川さんの口調からも2人の信頼関係の深さがうかがえた。

サイクリングだけでなくトライアスロン、マラソンなどもプレーされている柳川さん。「サイクリングはトライアスロンよりもハードだね。ただ今回のレースで国際ライセンスも取れたし、どんどん国際大会に出てみたい。チャンスがあればいつでも国際大会に出られるわけで視野が広がったよ」と豪快に笑う柳川さんからは61歳という年齢も、そして視覚障害というハンデも全く感じられなかった。

 普段あまり意識することのない障害者スポーツや、それに携わる人たち。以前はオリンピックの陰に隠れるようにしてほとんど取り上げられることがなかったパラリンピックも、16年のリオ大会では一部の競技が地上波で生中継されるなど、存在感を高めている。

 周知の通り、次回のオリンピック・パラリンピックは20年に東京で開かれる。奇しくも今回の大会が開かれた明治神宮外苑は、東京大会のメイン会場となる建設中の新国立競技場の隣接地だ。3年後の夏、この「Tokyo」に集まる世界中の選手から、障害の有無に関係なく世界をアッと言わせるような記録が次々と生まれることを想像すると、私の全身を熱い物が駆け抜けた。(森本善仁)